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ヘチマノチカラ

コロンの話は前に書きましたので、今回はヘチマの話をマジメにします。ヘチマは、西アジア、インド原産の瓜科の1年草。日本には中国経由で室町時代に渡来し、江戸初期に民間に広まったと言われます。日本名で糸瓜(いとうり)、後に訛って「とうり」に。糸がある瓜、繊維質が豊富な瓜という意味です。ではなぜ「へちま」と呼ぶのでしょう。実は「とうり」の「と」が、いろはにほへと…の『いろは歌』の「へ」と「ち」の間にあるので、「へ」「ち」間=へちま、という、江戸庶民のイキな命名、由来によるものとか。

ちなみに南瓜(カボチャ)、西瓜(スイカ)、胡瓜(キュウリ)、冬瓜(トウガン)などはみんな瓜の仲間。なぜか揃って黄色い花を咲かせます。ヘチマの若い実は柔らかく、食用になります。また腐らせて乾燥させ、繊維を取り出したものを「たわし」に使います。沖縄ではナーベラーと呼びますが、これは「鍋洗い」が語源だとも言われます。

中秋の名月の頃に、地上30cm位のところで茎を切ると、ほとばしるように出るのがヘチマ水で、化粧水はもちろん、民間薬、特に飲み薬や塗り薬として重宝されてきました。含有成分は、サポニン、ペクチン、タンパク質、糖分、ビタミンCなどなど。司馬遼太郎の小説「坂の上の雲」の主人公となった俳句の革新者、正岡子規。彼は結核を患い、ヘチマを武器に咳や痰と闘ったのです。「糸瓜咲いて 痰のつまりし 仏かな」「をとゝひの 糸瓜の水も 取らざりき」「痰(たん)一斗 糸瓜の水も 間に合はず」が、正岡子規の絶筆の三句と言われます。子規が亡くなったのは、1902年9月19日。子規の命日9月19日は、今でも俳人達に「糸瓜忌(へちまき)」と呼ばれているのです。

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