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ヘチマコロン懸賞

「日本のファンに好かれる欧米キネマ女優は誰か」というユニークな懸賞募集を、ヘチマコロンは、昭和5年(1930)4月2日付の東京朝日新聞に掲載しています。「流行は映画から、文化は映画から、正に映画の時代です。時代の突端を行く皆様に愛用せられるヘチマコロンは映画時代の化粧品です」と紙面で謳い、欧米の10人の人気女優を選出し、人気投票を実施したのです。No.1に選ばれた女優には、映画会社を通じて純日本風桐製大鏡台や縮緬のハッピーコートを贈呈。この企画は大きな反響をよび、投票総数は100万を超えました。

ノーマ・シャラー、メアリー・ピックフォード、ベティ・アマンなど、当時のそうそうたる人気女優の中から、「日本のモダン淑女、モダン青年」がNo.1選んだのは、ジャネット・ゲイナーです(左上)。本名はローラ・オーガスタ・ゲイナー。米国フィラデルフィア出身。1924年に端役でハリウッド映画に出演。27年の「第七天国」「サンライズ」、28年「街の天使」のヒロイン役で一躍人気スターとなり、29年実施の第一回アカデミー賞で、見事主演女優賞を獲得しています。「無敵の美しさ」「可愛らしいお人形さんのよう」と、いかにも日本人好みの美貌ですが、エキストラからトップ女優に登りつめたシンデレラ物語が、また、日本人の感性にも合ったのでしょう。

映画はサイレントからトーキーに移った激動の時代。唄えない、喋れない、台詞をまともに言えない役者は次第に銀幕から消えていく中、トーキー化の荒波を乗り越えてトップ女優の地位を保ち続けたゲイナー。美しいだけではない強さ、本物だけが生き残る世界…。なにやら教えられますね。

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