16話
レトロブームとヘチマコロン
レトロブームが依然として続いています。映像、マンガ、音楽、ファッション、コスメ、博物館等々、裾野は広がっています。日本を覆う閉塞感から、日本に元気があった時代を振り返ることで、癒されるのでしょうか。テーマの中心は主に昭和30年代から40年代に興奮した生活や遊び。いわゆる昭和レトロブームで、当時を知る世代には「ああ懐かしい!」。知らない若い世代には「へえ新鮮!」なようです。
白黒テレビ、銭湯、駄菓子屋、紙芝居….そして父がひっくり返すちゃぶ台。昭和レトロをテーマにした映画やTVには、そんなシーンが頻繁に出てきます。音楽業界は、過去のヒット曲をもう一度、のカバーブーム。一曲で2度おいしいカバー曲から、ミリオンセラーさえ出ています。レトロ柄のワンピースが流行り、レトロ調のバッグやブーツも若者には新鮮です。花火大会やお祭りで浴衣に下駄という服装は定着しました。雑貨や日用品では、レトロモダンというデザインが、和む雰囲気で若い女性の注目の的。大阪の空中近代都市「梅田スカイビル」と、その地下に再現した昭和初期の大阪の街「滝見小路食堂街」は、タイムスリップ感覚で人気です。「昭和レトロ商品博物館」(東京・青梅市)、「昭和ミニ資料館」(山形県高畠町)等は、地域おこしに一役かっています。
そして、レトロコスメです。ソフトピーリング効果で、うぐいすの粉やぬか袋が注目されたり、雑誌が「三丁目のレトロコスメ」特集を組んだり…。大正生まれのヘチマコロンも、若い世代にとっては、祖母や母の時代からあるレトロコスメとして大注目。流行の激しいコスメですが、結局ここに戻ってきてしまう、確実な効果と安心感があるのでしょう。ブームで火が点き、ブームでは終わらない「レトロ・ロングセラー」。そんな呼ばれ方が似合う化粧水です。