23話
千三百年、日本美人を磨いてきた「あづき」。
今回は、ヘチマコロンの姉妹品「あづき洗顔料」の話です。小豆(あずき、あづき)の名前の由来は、「ア」が昔から赤い色を指し、「ツキ」「ズキ」が溶けるという意味で、他の豆より形が崩れやすいことから付いた、という説があります。原産地は東アジアとされますが、日本では、縄文遺跡から発掘されているほか、古事記にもその記述がありますから、古代よりずっと人々の生活と密接に結びついてきたのでしょう。食用のほか、薬用としても使われたようで、中国・明の時代の「本草綱目」の中に、あずきの効能がはっきりと記されています。
そしてある日、あずきの茹で汁で洗顔したら「イトナメラカ」になることを発見した女性がいたのでしょう。法隆寺正倉院に沐浴剤としてあずきの粉が残されているので、その歴史は奈良時代に遡ると考えられています。以来千三百余年、洗顔料、美顔料として、あずきの粉は日本美人の素肌を磨いてきました。あの小野小町も静御前も北条政子も、あずき洗顔していたかも・・・なんて想像すると、何だか楽しくなりますね。乱世が落ちつき、化粧に目覚めた江戸時代の女性たちは、あずきの粉を洗顔料として盛んに用いたそうです。お風呂ではぬか袋、髪には米のとぎ汁に椿油、洗顔にあずきの粉を使うというのが、粋な江戸小町のたしなみだったようです。
この民間伝承を商品化し、大正の終わりから昭和にかけて大々的に売り出したのが、「あづき洗粉」です。以来今日まで、ロングセラー商品として、愛用されているのです。時代はケミカルコスメからナチュラルコスメの時代へ。レトロコスメの代表として、いま注目されている、ヘチマコロンの「あづき洗顔料」。リンク先のレトロな広告などを眺めながら、ぜひ「さっぱり、なのに、しっとり」を実感してください。