70

お帰りなさい、大正ロマン。

コロナ禍でモヤモヤしていた気分をスカッとさせるように、いま大ヒット中のあのアニメ。映画館ではマスクの上にティッシュを乗せて涙腺崩壊を防いでいる、なんて語る女性もいました。この人気アニメの時代背景は、大正時代。一方で「昭和レトロ」ブームも依然として元気です。純喫茶やカセットテープ、発売相次ぐLPレコードなど。「進化形レトロ」を名乗るカフェや銭湯も登場しています。そんな、人気アニメと昭和レトロが融合したかのように、いま「大正ロマン」が静かなブームだというのです。

大正時代は、女性の解放運動が盛んに成り、自立が叫ばれた時代。いま「大正ロマン着物」が女性に人気なのです。「女性はおしとやかであるべき」という保守的な雰囲気を脱し、殻を破って世の中に反発するような着物、日本の伝統柄に西洋デザインを採り入れた斬新なデザイン。足元はスニーカーなどカジュアルに着こなせる自由さに、今の女性たちがシンパシーを感じるのでしょう。またマジョリカタイルも若者に人気です。京都にある銭湯をイノベーションしたレトロなカフェでは、壁一面にマジョリカタイルが。大正時代を醸す雰囲気がSNS映えすると人気急上昇。また大正生まれのコッペパンもいまブームで、全国各地に専門店がオープンしています。ちなみにトンカツ、カレー、コロッケなども大正生まれですよ。

そして、大正ロマンを代表する名前と言えば、竹久夢二でしょう。その叙情的な作品は「夢二式美人」と呼ばれ、「大正の浮世絵師」とも称されました。児童雑誌の挿絵を描き、文筆の分野でも、詩、歌謡、童謡などを創作。中でも、詩『宵待草』には曲が付けられ、全国的な愛唱曲となりました。また、書籍の装幀、広告宣伝物、日用雑貨、千代紙、浴衣のデザインなども手がけた、日本の近代グラフィック・デザインの草分けのひとり。美人画だけでなく、懐かしくて新しいそのデザインも、改めて注目されているのです。

そして、大正ロマンや夢二で思い出して欲しいのが、ヘチマコロンです。大正4年生まれ。夢二をはじめとする当時の広告は、女性の美意識が変わった大正ロマンが薫ります。先の大ヒットアニメの主人公は、鬼にされた妹を想い、活劇するのですが、その必死さ、いじらしさがたまらないとか。女性のお肌への想い、天然植物にこだわるいじらしさは、ヘチマコロンも負けません。キレイを想って100年、全集中のヘチマコロンです。

PageTop