90話
おひたし、こまつな、ちんげんさい
何気なく後ろから聞こえてきた会話——。新しい出会いがあって。そろそろ新しい人たちとも慣れてきた。でも忙しさは変わらない。朝も慌ただしい。(そうなんだよねえ〜)だからお浸しよ、小松菜・チンゲン菜で。カンタンにできるし、ご飯にもよく合うし・・・。という話では、どうもないみたいです。

「おひたし、こまつな、ちんげんさい」と聞こえたのは、新しい人たちとの、上手な付き合い方の野菜ワード、キーワードらしい。●おひたし……怒らない・否定しない・助ける・指示する(上司の心がけ)●こまつな……困ったら・使える人に・投げる(部下に伝える心得)●ちんげんさい……沈黙する・限界まで言わない・最後まで我慢(若者の心模様、退職の危険信号)。
なるほどねえ。昭和の時代に、ホウレンソウがありましたね。ポパイのそれではなくて、報告・連絡・相談の、ほうれんそう。でもこの野菜ワードは、令和のZ世代には、かなり古くさい考え方だと。無理なことは無理と言いたい。自分の時間とかメンタルヘルスを大切にしたい。長い文章のやり取りは嫌い。タイパが悪い。だからレポート、報告、面倒くさい 。チャットのやり取りでパパパッと済ませたい、というのが Z 世代だとか。
でも私は、何でもチャチャっと出来ないから、会社でも家でも忙しいのかな。「ちゃんとしなきゃ」「私がやらないと」という口癖が、心の中にいつもある気がする。
とある雨の日、仕事帰りに実家に顔を出す。洗面所で手を洗おうとして、ふと目にしたレトロなヘチマコロンの瓶。私は「まだこれ、使っているんだ」。母は笑って「これがあるとね、どんなにバタバタしていても、せめて顔だけは手入れしてから寝ようって気になるのよ」。そしてこう続けます。「肌ってね、心より先に悲鳴をあげるの。ほっぺがピリピリしたり、ざらざらしたりしたら、心もお疲れさまってこと」
そうだよね。私も令和世代。明日の「やらないこと」をひとつ決めよう。全部は抱え込まないぞ。お肌の声を聞くぞ。その広告は、言うではないですか「ヘチマコロンで悩みのない微笑ましいお顔と ふくよかな白いお肌を あなたのものとなさいませ」。は〜い、私のヘチマコロン。雨も上がって空にも心にも、ちょっと日が射してきた気がした。